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9944.大分県の焼酎 ブログトップ

《焼酎》3.いいちこ 25度 200ml ペット [9944.大分県の焼酎]

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三和酒類株式会社
大分県宇佐市山本2231-1

原材料名 大麦、大麦麹
アルコール分25度
200ml
(以上、ラベルより転記)




あたしゃ酒のうまさを覚えた始まりは、働くようになってから出合った菊正宗をはじめとした灘にある大手蔵の銘酒でした。
一方、焼酎は学生の頃に飲んだことがありましたが、それはまさに酔うためであって、その味はまったく覚えておりません。

今月の初めに熊本県で焼酎を集めて、手元にはその在庫がいくつかございます。
これを一つずつ飲み始めてもよいのですが、その前に、世間で広く飲まれている銘柄をいくつか飲んでおくことで、味のちがいをよりいっそうはっきりと感じ取ることができるのではないかと思いつきました。

そこで今回は、この“いいちこ”を選んでみたわけでございます。
なお、三和酒類さんのお酒は、かつて本醸造 わかぼたん ぼたんカップをいただいております。

ところが、選んだ以上はその素性をあれやこれやと詮索したくなるのが私の悪い癖でして、今回も調べた結果を私の気が済むまで報告させていただきます。




1.大分麦焼酎“いいちこ”

このいいちこは、原材料に大麦を100%使用している“大分麦焼酎”です。
5523.JPG

今日において、「“大分麦焼酎”は、「麦麹を使用した麦100%の本格焼酎」として大分県酒造協同組合所有の地域団体商標として登録されている。」(※1)そうです。
その商標登録がかなったのは、大分県では二十数軒(三十かな?)の蔵元さんたちによって麦焼酎が盛んに製造されているからこそでしょう。

その中でも三和酒類さんが造る“いいちこ”は、今では大分県のみならず、日本の焼酎を代表する銘柄の一つと言っても過言ではないほど広く飲まれておりますね。
ですがその歴史は比較的新しく、発売開始は昭和54年(1979年)2月なのだとか。
登場してからまだ40年経っていないのですね。


大分県では古くから清酒(いわゆる日本酒)が広く飲まれており、一方で焼酎は清酒の搾りかすで造った粕取焼酎が造られていた程度だったそうです。
このことについて、手元にあった雑誌には以下のような記述がありました。
 清酒文化圏といわれる大分県は、清酒製造量が福岡県に次いで多い。清酒造りの歴史は古く、関白秀吉の醍醐の花見の宴にも豊後の麻地酒が出されたという記録が残っている。
 清酒蔵では焼酎も造っていた。酒粕や白糠など清酒造りの副産物を使った焼酎である。なかでも、粕取り焼酎は戦前、福岡県に次ぐ製造量であった。しかし、その後しだいに減少していった。」(※2)

ところが、昭和49年(1974年)に二階堂酒造が麦100%の麦焼酎“二階堂”を発売し、これが大ヒットしたそうです。
このことについて、文献では以下のように紹介されておりました。
 そんなとき同じ大分県の日出町にある二階堂酒造から、麦焼酎が発売され、密かに人気商品となっていた。昭和四九年(一九七四)のことである。それまでも麦焼酎は、長崎県壱岐の特産品として存在していたが、それは米麹を使い、かなり癖のある酒だった。ところが二階堂の麦焼酎は、新たに大麦と麦麹を用い、非常にさっぱりした味わいを有していた。乙類とは思えないすっきりした味と優雅な香りを持っていた。「臭いから香りへの転換」ともいうべきものであった(西の感想)。」(※3)

そして、“いいちこ”の蔵元である三和酒類さんでも、この二階堂に続けとの勢いで麦焼酎の商品化を進めたそうです。
当時の代表者の一人は、このことについて以下のように語っておりました。
 この商品(“二階堂”のこと:ブログ筆者注記)が画期的だったのは、主原料の大麦を糖化するのに必要な「麹」も含め、すべてを大麦で仕上げた一〇〇%麦焼酎という点にありました。
(中略)
 「これが焼酎か」。私も早速飲んでみましたが、従来の焼酎とのあまりの違いに愕然としました。業界の大方の反応も、当初は懐疑的だったような気がします。しかし、酒飲みからも焼酎は「においがきつい」と敬遠されていた時代に、焼酎独特のにおいがなく、酔い醒めもよい「二階堂」は評判を呼びました。
 大分市内の問屋で目にした光景が忘れられません。「二階堂」を満載したトラックが到着すると、まるで砂糖の山に蟻が群がるかのように営業マンが商品に殺到し、われ先に自分の配送用トラックに積み込んでいきます。すさまじい「二階堂人気」を目の当たりにして、頭を殴られたような衝撃を受けました。オール麦焼酎の出現は酔うために飲む労働者の酒といった焼酎のイメージを、味や香りを楽しむ酒へと劇的に変えました。「においから香りへの革命」とでも呼ぶべき出来事でした。
 「うちもあの味と香りを目指そう」。製造担当だった専務の和田昇さんの提案で、三和酒類も麦焼酎の開発に乗り出すことになりました。低迷続きの清酒の将来に事実上、見切りをつけたのです。」(※4)


「二階堂」「いいちこ」の成功は、多くの清酒兼業蔵や焼酎専業蔵が粕取り焼酎や白糠焼酎から麦焼酎製造への転換を進める契機となった。」(※1)そうですが、その後、「 「いいちこ」が生まれた一九七九(昭和五十四)年は、平松守彦氏が大分県知事に就任し、地域おこしの「一村一品運動」を提唱した年に当たります。八〇年代前半は「いいちこ」をはじめ大分の麦焼酎が燎原の火のように全国に広まり、一村一品運動の「優等生」ともてはやされた時代。築地や赤坂の料亭など、中央で盛んに売り込んでくれた平松さんのおかげだと思っています。知事を退任された今でも、平松さんには足を向けて寝られません。まさに「いいちこ」は、一村一品運動の後押しを受けて大きく羽ばたいた大分、宇佐の地域産品なのです。」(※5)という記述にあるとおり、県の後押しもあって、いいちこも他の大分麦焼酎も全国ブランドとして育っていき、今日に至るそうです。

そうして「大分県は全国一の本格焼酎製造量を誇る。(2003年当時:ブログ筆者注記)」(※6)ほどにまで登りつめました。


すなわち、今日における大分麦焼酎の礎は、“二階堂”と“いいちこ”とがわずか40年ほど前に築いたものだったのです。




2.麦麹

麦100%の焼酎ということは、麹も麦でこしらえてあるわけです。
この麦麹を使うことで、米麹を使う焼酎よりも軽快な味わいに仕上がるのだとか。

 従来の麦焼酎は米麹に麦をかけて造っていたのに対し、我々は麦麹に麦をかけることにした。その方が香りが華やかで軽いからです。お米はしっとりとしておいしいけど重い味がする。その点、パンはふんわりとして軽いでしょう。この違いに着目して麦麹を使えば、これまでの常識を覆す新しいタイプの麦焼酎を開発することができるとみたわけです」(熊埜御堂社長)」(※7)

 全麹造りというのは、いわば必然でした。麦だけだと非常に軽くて、やわらかいタイプができるけど、深みがなかなか出ない。そこで、昭和六〇(一九八五)年くらいから、深みを出すために全麹造りを始めました。
 最初は、隠し味のような形で、レギュラーの「いいちこ」の中にブレンドしていたんです。六年ほど前(平成一〇年)に、はじめて全麹造り単独で商品化しました。「いいちこ フラスコボトル」です。」(※8)

しかしその反面、どうやら麦麹には糖化力の弱さクエン酸の生成量の少なさなどといった欠点もあって、その克服と実用化とは簡単ではなかったようです。
それ故に、二階堂やいいちこ以前の麦焼酎は、麹だけは米麹を用いていたのでしょう。

麦麹の欠点を克服した顛末を紹介した記述に当たることはかないませんでしたが、麦麹の性質については、以下のような記述を見つけました。

 麦麹は、米麹に比べて、α-アミラーゼやグルコアミラーゼなど主要な酵素群の活性が約半分と低く、(中略)焼酎麹で重視する出麹酸度も1~2ml少ない。また、突きはぜ・総はぜ麹ではなく塗りはぜ麹になりやすい。これらは焼酎麹として短所と考えられていたが、その後、麦麹はもろみの溶解に対して十分量の酵素量があり、米麹と比べて細胞壁溶解酵素キシラナーゼを多く生産するため麦焼酎もろみの発酵に適していることが明らかにされている。今後、発酵や焼酎原酒の酒質と関連づけて、よりはぜ込みの良い高品質な麦麹を検討する余地はあると思われる。」(※9)

 本格焼酎用の麹である白麹菌は、(中略)この麹は米において活性度が高くなる。でんぷんを糖に変える能力は米麹が最も高い。それだけでなくさまざまな副産物もつくり出す。ただこれを麦に使うと比較的純粋なもろみがつくられる。発酵、蒸留をしたとき、不純物の含有量が少ないということがわかったのだ。しかし香味の素となる高級アルコールやエステル類はかえって多く生み出す。これが麦焼酎独特の風味につながった。麦麹の採用―これが麦焼酎成立の一つの要件である。」(※10)




3.飲みやすさ

焼酎というと香味、すなわち独特の風味・においを有することがアタリマエだったわけですが、“いいちこ”はそれをも克服したそうです。
上記(※3)の文献では、(※10)の記述に続けて、このことを以下のように紹介しておりました。
 もう一つ麦焼酎の開発上の大きなテーマとなったのは、いかに本格焼酎独特の臭みを減らすかであった。これは蒸留時に嫌な臭いのもととなる不純物を除去することによって実現できる。ここで開発されたのが減圧蒸留という方法だ。
(中略)
 もともと不純物の生成が少ない麦麹を使ったということ、それに加えて減圧蒸留法の開発が臭みの少ない焼酎をもたらした。さらに蒸留した後液化回収される酒成分のなかにまだ残存している不用物質を除去する方法として、物理的な精密ろ過技術も採用された。これがより純粋なアルコールといくつかの揮発物質をバランスよく酒のなかに溶かし込める役割を果たす。しかし本格焼酎の持ち味となっている香味をもたらす成分は逃さない。こうした技術の開発に取り組んできたことが、麦焼酎を限りなく飲みやすい酒としたのである。」(※11)

減圧蒸留は、加熱によって発生する香味物質を生じさせないようにするために、蒸留器内の圧力を下げ沸点を下げて蒸留する方法ですが、これについてはかつてこちらでまとめておりますので、ご参照ください。

また、これは私の予想ですが、上記(※11)で触れられている「物理的な精密ろ過技術」なるものは、おそらくイオン交換樹脂を用いた“イオン交換処理”のことではないかと推察いたします。

イオン交換処理は「原子力発電、電子工業などの洗浄プロセスで、大量の超純水が必要となり、また製薬工業、食品工業での脱塩や濃縮を行なうために、幅広く使われ」(※12)ているろ過技術であって、それを焼酎に転用することで「本格しょうちゅうの中の不快成分が、脱イオンされ、吸着されて、現在のニーズに適合したマイルドな、しょうちゅうができるのです。」(※13)とのこと。
しかし私は、このイオン交換処理のしくみをわかりやすく説明できるだけの科学的知見を持ちあわせておりません。
そこで、まことに申し訳ございませんが、ここではその効果について紹介している文献の記述を引用するに留めておきます。

 アルデヒド類、有機酸類、中沸点脂肪酸エステルを選択的にイオン交換や吸着作用により除去する。
(中略)
ここでのイオン交換処理の効果は、本質的には原酒の持つ香味のマイナス成分を除去することで、相対的に穏やかな芳香や軽快で切れの良い味わいを引き立たせることにある。したがって、良質な麦焼酎原酒の製造を心掛けることが大切である。
 イオン交換処理をした精製酒は、軽く炭素ろ過を行うことで香味を整える。」(※14)

フルフラール(香ばしさや焦げ臭の原因物質:ブログ筆者注記)は、大麦焼酎仕込中に麹菌の加水分解酵素によって遊離されたキシロースが、醪中の有機酸による低pH条件と蒸留時の加熱を受けて生成され、蒸留とともに製品に移行するので、低温で蒸留される減圧蒸留酒では含有量が低い。また、イオン交換処理や活性炭処理で除去されるので、ソフトタイプの製品では少なくなる傾向がある。」(※15)


いいちこに関しては、これら以外にも酒銘を公募で決めたことや販促や宣伝に関する話、あるいは原料の調達先や糖類の添加を止めた経緯などが面白いと思ったのですが、これらをすべてここで紹介するとかなり冗長になってしまいそうですのでやめておきます。
もうすでに冗長だよ!





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それでは、麦100%に減圧蒸留、そして精密なろ過技術を用いて製造されたこの麦焼酎をいただいてみたいと思います。


まずは、生(き)、すなわちストレートで。
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アルコールの香りはありますが、それほど気にはなりませんね。
焼酎らしい香るような風味はありますが、かなり弱めです。
そのかなり弱めの風味ですが、弱い中に香ばしさがあって、しかも角がなくて穏やかです。
上記(※7)にあったように、パンのようなふんわりとした香ばしさをかすかにほんのりと感じます。
その風味が香るとともに、舌の上にもちょっと乗ってくるようです。
また、減圧蒸留&ろ過の成果でしょうか、焦げ臭さや雑味はまったくありませんね。
それにピリピリ感もありません。
後味もすっきりしています。


次に、焼酎6:お湯4のお湯割りにしてみました。
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生(き)よりもさらにまろやかです。
それでいて風味は薄くはならず、しっかり残っています。
かすかな香ばしさを感じとることができますよ。
それにお湯割りにしたことで、かなり軽くなりましたね。
生(き)も軽めでしたが、こっちのほうがよりいっそう軽くなりました。
さらに、生(き)ではわからなかったものの、お湯割りにすることでレモンを薄めた酸味のような風味をほんのりと感じることができましたよ。


最後は、残ったものをロックでいただきます。
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香ばしさは、これが一番よくわかるようです。
それに、フルーティーな風味もかすかに出てきたみたいです。
でも、角をちょっと感じるようになりましたが、淡いので気にはなりません。
お湯割りで感じた酸味のような風味は、ロックでも出てくるみたいです。
キリッとしていて、おいしくいただくことができました。


いいちこは、風味がさわやかですっきりしているのに、じっくり味わうと味わい深さを感じ取ることができるおいしい焼酎でした。

風味が淡いので、甲類焼酎(連続式蒸留の焼酎)に近いかもしれません。
それ故に、果汁や炭酸、フレーバーで割って飲んでもおいしくいただけると思いました。

でも、かすかに感じる穏やかでふんわりとした香ばしさや、お湯割りやロックで感じた酸味のような風味をじっくりと感じ取ることも、また楽しいところでした。
これは私の感想ですが、この繊細な味わいは、京料理のような食材の味を活かした薄味の料理に合うのではないでしょうか。

また、焼酎は鼻腔の辺りに後味が残ることがあるようですが、このいいちこでは酸味のような風味がかすかに残る程度で、それもまたさわやかでした。



大分麦焼酎を代表するいいちこ、堪能させていただきました。

冒頭の(※2)で紹介したとおり、大分県では麦焼酎だけでなく、清酒の製造もしっかり根付いているようですね。
ということは、大分で酒集めをすれば、カップ焼酎とともにカップ酒もGETできちゃったりするのかもしれませんね。

こりゃぜひとも、大分県で酒集め&焼酎集めをしてみたくなってきましたよ!





(※1)岡崎直人・下田雅彦『麦焼酎の技術史』p.537(日本醸造協会誌 103巻7号 p.532-541 2008.7)
(※2)金羊社発行『焼酎楽園 Vol.6』p.6〔『特集 豊の国で見つけた新しい風 大分の地焼酎』( p.2-11)内〕(2001年11月 星雲社)
(※3)平林千春『奇蹟のブランド「いいちこ」』p.11(2005.6 ダイヤモンド社)
(※4)本山友彦『西太一郎聞書 グッド・スピリッツ 「いいちこ」と歩む』p.90-92(2006.10 西日本新聞社)
(※5)(※4)p.140-141
(※6)金羊社発行『焼酎楽園 Vol.15』p.5〔『【特集】旅行けば焼酎 まるごと「豊の国」大分県』( p.4-17)内〕(2004年11月 星雲社)
(※7)『総論 三和酒類『いいちこ』--麦焼酎の常識を覆しトップに立つ』p.11-12(戦略経営者 16巻9号 p.10-13 2001.9 TKC)
(※8)(※6)p.40〔『三和酒類・熊埜御堂社長が語る「いいちこ」の味』( p.40-41)内〕
(※9)下田雅彦『麦焼酎』p.368(日本醸造協会誌 94巻5号 p.365-371 1999.5)
(※10)(※3)p.67
(※11)(※3)p.67-68
(※12)中西志郎『7 本格焼酎のイオン交換処理について』(第26回社団法人日本醸友会シンポジウム -酒造業の今後の方向をさぐる-2-)p.93(醸造論文集40号 日本醸友会 1985)
(※13)(※12)p.97
(※14)(※9)p.370
(※15)(※1)p.538
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