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【お酒】1193.白鶴 上撰 淡麗純米 お燗瓶 [28.兵庫県の酒]

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白鶴酒造株式会社
神戸市東灘区住吉南町四丁目五番五号

アルコール分 13度以上14度未満
原材料名 米(国産)・米こうじ(国産米)
精米歩合 70%
国産米100%使用
180ml詰
(以上、瓶の印刷事項とフタとより転記)




あたしゃ意外だったのですが、このブログで白鶴さんのお酒を紹介するのは、今回が初めてでしたよ。


今更言及の必要はないかもしれませんが、灘五郷は御影郷に蔵を置き、「当社は創業を寛保三年(一七四三)とし、現当主は九代目となる。去る昭和四十八年(一九七三)十月十日をもって二百三十年の創業記念日を迎えることができた。」(※1)と今から40年ほど前に出版された書籍でもその歴史の深さを紹介されている蔵元さんです。

その白鶴酒造さんは、かつては“白嘉納家”と言われていたように、元々は菊正宗(本嘉納家)の分家筋に当たる蔵元さんでした。
このことについて、文献では以下のように紹介されておりました。

 六甲の山なみを背景に、どこまでも続く遠浅の浜辺。静かに打ち寄せる波を朝からじっと見つめている若者がいる。摂津・御影村の生魚屋(うおや)治郎太夫宗徳。後の嘉納家の始祖である。
(中略)
 宗徳が、酒造業に進出したのは万治二年(一六五九)。これが、菊正宗の創業である。
(中略)
 宗徳の商才は四男の治兵衛良清に受け継がれ、家業の回船業と網元は材木業に切り替えられるが、酒造りだけは副業として続く。そして、二代目治兵衛良西の時代になって、ついに酒造りがもっぱらの家業となった。さらに良西は、長男の治郎右衛門秀孟に家業を譲ったのち、寛保三年(一七四三)、末っ子の六男治兵衛を連れて分家。この二人が現代の白鶴酒造の創始者となるのである。時代は、伊丹酒全盛の元禄期が過ぎ去り、灘の黄金時代がまさに到来しようとしているころであった。」(※2)

本嘉納・白嘉納の両家はけっして対立していたわけではなく、それぞれが切磋琢磨しつつ、時には協力し合っていたようです。
その協力の一つと言えるのが、今日においては天下の名門校にまで発展した、灘中学の設立でしょう。
上記と同じ文献では、このことを以下のように紹介しておりました。

 不況で明けた昭和二年、物みな沈滞する中で、進学熱だけはなおいっそうの高まりを見せていた。大戦景気の後、阪神間に住宅ブームを呼んだ“新中流層”が、こぞって子弟教育に強い関心を持ち始めたのである。旧制中学への進学希望者がにわかに増え、塾通いの小学生が夕暮れの六甲山麓を足早に行き来する姿が目立つようになった。
 「なんとか門戸を広げられないものか」―御影師範教師の曽我豊吉はそう思った。地元のよしみで、教育問題に日ごろから関心を寄せていた「白鶴」の嘉納治兵衛、「菊正宗」の嘉納治郎右衛門、「桜正宗」の山邑太左衛門に相談を持ちかけた。三家の間でも、教育施設充実の声が上がり始めていた折でもあり、話はスムーズに進んだ。「灘育英会」が創設され、地元魚崎町から寄付を受けた広大な牧場を整地して、灘中学がスタートした。昭和三年四月のことである。」(※3)


今日は、そんな灘の名門である白鶴酒造さんが造ったこの純米酒をいただきます。
その純米酒ですが、品質表示を見るに、アルコール度数が13-14度とやや低めのようでした。
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純米酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。

お酒の色は、無色透明でした。
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うまみはかなり淡めです。
やわらかいうまみをかすかに感じる程度です。
苦みや雑味はなく、またキレもよいみたいです。

酸味ははっきりしています。
すっぱさが少し強めで、しかも鋭さを感じます。
それに、ちょっとだけピリッと感じます。

甘みはややひかえめです。
かなりさらっとした甘みをほんの少し感じる程度です。


酸味が味を引き締める、淡麗ちょいすっぱやや辛口のお酒でした。
苦みや雑みのないところは、大手蔵の真骨頂ではないでしょうか。
一方でアルコール度数が低めなのは、淡さを出すと同時に酸味を抑えるためだったのでしょうか?
私としては、この酸味にはもう少しうまみか甘みかがしっかりしていたほうが釣り合いがとれるのではないかと感じました。
これは私の予想ですが、もしかしたらこのお酒は、冷蔵庫で冷やしていただいたほうが酸味が和らいでいたかもしれません。

再びこのお酒に出会った際には、冷やしていただいてみたいと思います。


(※1)坂口謹一郎監修・加藤辨三郎編『日本の酒の歴史』p.646(清水敏雄執筆『酒造り雑想』p.646-650中 1977.8 研成社)
(※2)神戸新聞社会部編『生一本 灘五郷-人と酒と』p.77-78(1982.11 神戸新聞出版センター)
(※3)(※2)p.177-178

【お酒】1030.沢の鶴 山田錦 特別純米酒 生酛造り 生貯蔵酒 [28.兵庫県の酒]

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沢の鶴株式会社
神戸市灘区新在家南町五丁目1番2号

原材料名/米(日本産)・米麹(日本産米)
アルコール分/14.5度
精米歩合/70%
300ml
(以上、ラベルより転記)




灘五郷の最も西側の地域である“西郷”に蔵を置く沢の鶴さんのお酒は、かつて特撰吟醸瑞兆と、普通酒の樽酒(酒道粋人)本醸造の上撰お燗瓶、それに本醸造の上撰生酒をいただいております。
今日いただくこのお酒は、特別純米酒生酛造り生貯蔵酒です。


このお酒は、兵庫県播州産の山田錦を100%使用しているのだとか。
でも、特A地区産のものに限定しているわけではないみたいです。
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「山田錦」で造った酒の味は、濃醇で幅があるとよく言われる。」とか、あるいは「「山田錦」の酒は味、香りに広がりが違い、口の中の広がりがふくよかである。」(※1)そうですが、果たしてこのお酒からもそういった味わいを感じ取ることができるのでしょうか?


また、このお酒は生酛造りなのだとか。
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かつてこのブログでは、生酛で育った酵母は力強いので発酵がよく進み、その結果きれいな酒質になるという趣旨の記述を紹介したことがありました。
ということは、このお酒も雑味のないきれいな酒質なのでしょうか?


いただく前からああだこうだと考えていても、お酒の味はわかりません。
これらのことを念頭に置きつつ、そろそろいただいてみたいと思います。
生貯蔵酒ですので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。

お酒の色は、透明でした。
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生貯蔵酒らしいフレッシュな風味はありますが、クドくなくてちょうどいい感じです。

うまみは淡めですが、淡いなりにしっかりしています。
米のうまみが口の中全体にパッと広がるのは、やはり山田錦の効果でしょうか?
それに、口を切ってしばらく経つにつれて、酒臭さ(←ほめ言葉です)が徐々に出てきたようです。
苦みや雑味はまったくありません。

酸味はややはっきりしています。
すっぱさは強くはないものの、鋭さを少し感じます。
刺激やピリピリ感はありません。

甘みはややはっきりしています。
さらっとしたした甘みを、少し強めに感じます。


フレッシュな風味に米のうまみ、それに酸味が効いた、淡麗爽快甘口のお酒でした。
フレッシュな風味がちょうどよく、酸味と相俟ってさわやかさを作り出しているようでした。
また、徐々に酒臭さ(←あくまでもほめ言葉です)が出てきて、飲み応えも感じました。
雑味がなくてきれいなのは、やはり生酛造りで育った酵母の効果でしょうか?、それとも灘の宮水のおかげでしょうか?

ただ、これは私の嗜好に基づく偏見かもしれませんが、甘みがちょっと気になりました。
甘口好きのみなさまには、ちょうどよいかもしれません。


(※1)兵庫酒米研究グループ編著『山田錦物語 人と風土が育てた日本一の酒米』p.27(2010.4 神戸新聞総合出版センター)

【お酒】1013.Vセレクト 淡麗辛口 灘の鬼ころし カップ [28.兵庫県の酒]

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販売者:株式会社バロー
岐阜県多治見市大針町661-1
製造者:大関株式会社
兵庫県西宮市今津出在家町4-9

原材料名:米(国産)・米こうじ(国産米)・醸造アルコール
アルコール分13度以上14度未満
200ml
(以上、ラベルより転記)




このお酒ですが、岐阜県多治見市に本店を置くスーパーが企画し、兵庫県は灘五郷のうち今津郷にある大関さんが造ったお酒のようです。
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そういえば以前、広島県福山市に本店を置くスーパーが企画して、灘五郷のうち魚崎郷に蔵を置く櫻正宗さんが造ったカップ酒をいただいたことがありました。

なお、大関さんのお酒は、これまでに以下のものをいただいております。
266.オダキュー 天下の険 上撰 カップ
386.大関 超特撰 大坂屋長兵衛 大吟醸 180ml
695.本醸造 上撰 辛丹波 300ml
1000.ワンカップ大関 上撰


“鬼ころし”という酒銘が付けられております。
その意味については、かつてこちらでまとめておりますので、ご参照下さい。
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またこのカップ酒ですが、フタには“金鹿”という銘が記載されておりました。
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金鹿(きんしか)は、かつて大関さんと同じく灘五郷の今津郷にあった灘酒造さんが使用していた酒銘です。
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〔『灘の酒博物館』巻末折込図より(1983.10 講談社)〕

文献や確定的な情報に当たったわけではないので正確に記述することはできませんが、この灘酒造さんは21世紀に入ってから廃業し、それを大関さんが救済に乗り出して傘下に収めたようです。
きっとその際、大関さんが“金鹿”の酒銘も引き継いだのですね。

これは二年前に撮影した、西宮市にある金鹿さんの宮水井戸を示す看板の写真です。
廃業した後も、井戸は残っていたようですね。
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宮水の意味については、こちらをご参照下さい。


灘酒造さんは、灘での酒造りは昭和三十年代からと比較的新しかったようですが、その由来は戦前に朝鮮半島で酒造りをしていた蔵元さんにあったのだとか。
このことについては、手元の文献に以下のような記述がありました。

 朝鮮北部で「元山酒造」を経営していた植田(植田八郎・当時の灘酒造社長:ブログ筆者注記)にとって、敗戦はまさに青天の霹靂だった。内地の不況とは対照的に順風満帆だった酒造り業が烏有に帰した。工場設備などはすべて接収。財産どころか、家族五人が無事に引き揚げることが精いっぱいだった。
 揖保郡御津町出身の植田の父・伊之助は日露戦争後に朝鮮に渡り、大正五年から酒造業を始めた。業績は順調に伸び、昭和七年には、家督は植田に移った。昭和六年に勃発した満州事変後、清酒の需要が急増。元山酒造の石高は終戦の二十年には一万石近くにまで達した。もっとも軍需をはじめ日本人相手の商売がほとんど。当時朝鮮での清酒醸造会社は百社を超えたが、その多くは軍の力をバックにした日本からの進出企業だった。
 帰り着いた植田は、食うや食わずの生活を続けた。ようやく大阪で海産物の卸の仕事を細々と始めたものの、虚脱感はどうすることもできない。一日中釣り糸を垂れて過ごすこともあったが、酒造りへの熱い思いは断ち切ることができなかった。
  (中略)
 植田らは二十八年「朝鮮引き揚げ清酒製造業者連盟」を結成。全国に散らばっていた約八十人の元業者を探し出し、「われわれにも酒造免許を」と、国税庁酒税課へ連判で訴えた。
  (中略)
 引き揚げ者は、四つの地域に分散して“復活”することになった。岡山、山口、長野、そして兵庫。植田らは二十七人が集まり、苦しいなかから五百万円を捻出し、資本金とした。酒蔵は神戸・西郷にあった「忠勇」(若林酒造)の蔵を借りることができた。仕込みは三十年十二月に始まった。
 「灘酒造」。酒銘は「金鹿」。新しい灘酒の誕生である。
  (中略)
 灘酒造は三十五年、西宮に移り、灘五郷の中堅メーカーとして歩み続ける。初年度の石高はわずか九百九十石だった。植田は灘で初めて造った酒の味が、今も忘れられないという。」(※1)


そんな金鹿の酒銘を今に引き継ぐこのお酒ですが、糖類や酸味料は添加されていないものの、アルコール度数がやや低めに設定されておりました。
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醸造アルコールを添加して造ったお酒ですから、もろみを搾った際の度数は20度を超えていることでしょう。
それ故、おそらくこのお酒は加水を多めにして薄めて量を稼いでいるのだと淡麗さを出しているのだと思います。

たしかにね、お値段も118円と破格の安さでしたよ。
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もしかして大関さんでは、“金鹿”を安酒の銘柄としてお手軽なお値段のお酒の銘柄として使用しているのでしょうか?

でもね、別の文献によれば、在りし日の金鹿はなかなかの良酒だったそうですよ。
 金鹿は、一万石ほどの蔵です。100%灘の酒をキャッチフレーズにして、桶買いをしないで、自製酒のみを出荷しているところに、特色があります。特色のある製品としては、一、二級の辛口銘柄名の金鹿にちなんだ「バンビカップ」など。もちろん、こういう蔵の酒は、デラックスで、その特長を味わいたいものです。」(※2)
(桶買いについては、かつてこちらの末尾で触れております。)


大変お待たせいたしました。
そろそろいただいてみたいと思います。
普通酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。

お酒の色は、ほとんどわからない程度でした。
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うまみはやっぱり淡めです。
でもね、淡いなりに醸し出された酒臭い(←ほめ言葉です)うまみを感じますよ。
それに、熟成感もかすかにあるみたいです。
軽い苦みもちょっとだけあるみたいですが、まったく気にはならない程度です。

酸味はややひかえめです。
すっぱさは弱めですが、鋭さを少し感じます。
刺激やピリピリ感はありません。

甘みはややはっきりしています。
淡いせいかもしれませんが、べとついた感じはなく、さらっとしています。


淡めだが、淡いなりに味と飲み応えとを感じることができる、淡麗旨やや甘口のお酒でした。
度数の表示のみならず味わいの淡さからも、おそらく加水は多めだろうなと感じました。
でも、ワンカップ大関の上撰よりも、こちらのほうが酒臭さ(←あくまでもほめ言葉です)や飲み応えがあって、よりお酒らしい味わいでした。
私はワンカップ大関よりも、こっちのほうが好みですね。
それにこの値段でこの味わいでしたら、御の字だと思います。
もしかしてこれは、在りし日の金鹿の味わいを今に受け継いだ成果なのでしょうか?


(※1)神戸新聞社会部編『生一本 灘五郷-人と酒と』p.221-222(1982.11 神戸新聞出版センター)
(※2)中尾進彦『灘の酒』p.97(1979.7 神戸新聞出版センター)

【お酒】1000.ワンカップ大関 上撰 [28.兵庫県の酒]

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大関株式会社
原材料名:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール
アルコール分15度以上16度未満
180ml詰
(以上、ラベルより転記)




1000個目の記念すべきお酒は、やはりこれしかないでしょう。
(といっても、何を血迷ったか、かつて一度だけ《番外編》なるものを設けておりますので、正確には1001個目ですが。)

なぜならば、「ワンカップは、昭和三十九年十月1964年10月:ブログ筆者注記)(東京オリンピック開催、東海道新幹線運行開始)に発売した。」(※1)わけですが、まさにこのワンカップ大関こそが、「日本酒といえば一升瓶で売られるのが当たり前だった時代」(※2)に、日本、いや世界で初めて発売されたカップ酒だからです。

すなわち、私がこんなばかばかしい内容のブログを書くことができるのも、大関さんがワンカップ大関を世に送り出してくださったおかげなのです。


なお、大関さんのお酒は、これまでに以下のものをいただいております。
オダキュー 天下の険 上撰カップ(今日いただくお酒と同じ中身か?)
大関 超特撰 大坂屋長兵衛 大吟醸 180ml
本醸造 上撰 辛丹波 300ml

また、これとか、あるいはこれのようなワンカップに似て非なるものもありましたが、これらは他社の製品でした。



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“ワンカップ大関”や“ワンカップ”は、大関さんの登録商標です。
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それ故、“ワンカップ”を名乗ることができるカップ酒は、このワンカップ大関だけなのです。
つまり、ほかの蔵元さんが販売しているカップ酒をワンカップと呼ぶことは、適切ではないのです。


開発の契機は、「飲食店で酒を注文すると徳利で出されるため銘柄がわからないが、商品名を記したコップで販売すれば、だれにでもわかると考えたのだ。」(※3)とか。
あるいは「当時、日本酒は、一升瓶からとっくりへ移し、おちょこに注いで飲むのが一般的な飲み方でした。「ワンカップ大関」はその過程を大幅に省略し、手軽にカップからそのまま飲めるようにしたのです。同時に、屋内だけでなく、どこでも日本酒を飲めるというスタイルを実現しました。」(※4)とのこと。

アタリマエと思われていたお酒の飲み方を変えるというすごいアイデアを思いついた「『ワンカップ大関』の生みの親は、一般に十代文治郎 (当時の大関の社長であった十代目長部文治郎:ブログ筆者注記)だと言われている。」(※5)そうです。
しかもその「十代文治郎は、「アイデアマン」で知られた人だった。」(※5)とのこと。



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しかし、社長がどんなにすばらしいアイデアを思い付いても、社員の皆さんがそれを実現させるためには、得てして並大抵の苦労では済まないわけですよ。

割れにくい容器や、高い密閉性と開けやすさとを両立させるフタを設計製造することはもちろん、「キャップ材から移る臭いが問題になった」(※6)こともあり、それを克服するために苦労なさったそうです。

また、当初は「ジャムの広口瓶が日本酒に応用できないかを検討した」(※7)ものの、「スクリュータイプのキャップは容器の縁に刻まれたねじ山が口に当たる。飲み心地をよくするにはコップのようなつるりとした形状が理想だ。」(※8)ということで、今のような飲み口を設計したのだとか。
しかしこれにも問題が発生し、「リップタッチを良くするために瓶口が少し膨らんでいるため、瓶同士がぶつかるとこの部分が破損することがある。」(※9)ことから、昭和40年(1965年)からカップに“ポリ蓋”をかぶせるようにしたとのこと。
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そういえば、ワンカップ大関のみならず、今日のカップ酒には呑み口の直径を胴の部分のそれと同じにしているものが少なからずあります。
これもきっと、ポリ蓋と同じく、割れないようにするための工夫なのでしょうね。
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また、社員の皆さんが苦労なさったのは、技術開発だけではありませんでした。
社員の多くは立ち飲みの品のないイメージが強いコップ酒に抵抗があった」ことから、「ここでメンバーが腐心したのは、冷や酒と立ち飲みというマイナスイメージをいかに振り払うかだった、そこで対象年齢を若年層とし、立ち飲みを連想させない商品を目指すことにした。」(※10)という、商品イメージをよくするための努力も払われていたそうです。

この青地に白いアルファベットでデザインされたラベルも、数ある努力の結果のうちの一つと思われます。
これは「十代文治郎の「清酒らしくのうてええ。若者にマッチするような色を使ってくれないやろうか」という要請に応えたものだ。当時の清酒業界では珍しかった地色の青は、十代が旅行先のハワイで魅了された海の色に由来するものだというエピソードも残っている。」(※11)のだとか。
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イメージの問題はともかく、このラベルのデザインは、発売から50年以上経った今日においてもたしかにけっして斬新さを失っておりませんね。



さらに、製造したワンカップ大関を全国の酒屋さんに置いてもらうために、「毎月、分担を決めた地域に入り、そのエリアの酒販店の名簿を手に訪問営業を行なった。」という「ローラー作戦を仕掛けた」とのこと(※12)。
また、大関との取引がない地方の卸店に対しては「既に大関と取引のあるその地域の特約店の名前を出し、その特約店の二次店として扱ってもらえないかという交渉」をしたり、あるいは少ない数のワンカップ大関を酒販店へ配送することを嫌う卸店を説得するために、大関の「営業担当自ら酒販店に届けることを条件に、伝票を切ってもらうということまで行なった。」そうです(※13)。

いまでこそワンカップ大関はどこの店に行っても普通に見られるお酒となっていますが、これは社員の皆さんが営業活動に注いだ努力の成果なのでしょう。
これは私の推測ですが、当時は制度的にも、また酒販業界の意識にしても、今よりもお酒の流通に対する制約が多かったことでしょうから、その努力は並大抵のものではなかったことでしょうね。



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これらはあくまでも一例です。
なにせ世界初のカップ酒を世に送り出したわけですから、大関さんはもっともっとたくさんの問題を乗り越えてこられたことでしょう。
それを可能にしたのは、大関さんの社是に“魁精神”という考え方があったからなのだとか。
最後に、その魁精神について紹介している(と思われる)文献の記述を引用したいと思います。

 大関の長い歴史を振り返ってみると、苦境でも諦めず、リスクは恐れないが、一方では堅実に先へ進もうという意志が常にあることを感じる。この経営意志は、後に十一代文治郎によって「魁(さきがけ)」という言葉に凝縮された。」(※14)

 大関という企業には、「魁(さきがけ)精神」という言葉にも表されているように創醸三〇三年の歴史の中に、自分たちで新たなものを生み出していくDNAが受け継がれている。」(※15)

 大関という清酒メーカーは、ただ日本酒を造って売るだけではない。日本酒のあり方、楽しみ方、そして日本酒に関わるサプライチェーンのあり方、日本酒を扱う人たちのあり方に至るまで、あらゆることに「問い」を立て、問題提起しながらその答えを自ら創造することを行なってきた。
 『ワンカップ大関』はその最たるものだったわけである。だからこそ「ワンカップといえば、大関」という、一商品の存在にとどまらない存在価値をもつことができたのだ。」(※16)



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大変長らくお待たせいたしました。
ワンカップ大関の凄さを紹介させていただいたところで、そろそろいただいてみたいと思います。

普通酒ですので、いつもならばぬる燗でいただくとことです。
しかし、このワンカップ大関は、店頭での販売方法やそのお手軽さから判断するに、おそらく冷や(常温)でいただくことを想定しているものを推察いたします。
そこで、今日は冷や(常温)でいただきます。

お酒の色は、かすかに着いていることがわかる程度でした。
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これは一般的なお酒のあじわいとはちょっとちがう、独特の風味ですね。
生貯蔵酒に似ているような、あるいはラムネのような風味を感じます。
一方で酒臭さはまったくなく、苦みや雑味もいっさい感じませんね。
でも、よくよく味わってみると、米の味をかすかに感じるみたいです。

酸味はひかえめです。
すっぱさはまったくなく、さわやかさをちょっとだけ感じます。
当然ながら刺激やピリピリ感はありません。

甘みははっきりしています。
けっこう甘めですが、それでいてべとついた感じはないですね。


淡麗軽快甘口のお酒でした。
酒臭さとか熟成感とか、あるいは吟醸香とか、そういう一般的な清酒の味わいとは全く異なると思います。
これは私の感想ですが、むしろチューハイの風味に似ているように感じました。
 (オランダ人のチューハイムさんが長崎の出島に伝えたやつです。) 
雑味のなさや酸味のひかえめさから推察するに液化仕込みかもしれませんが(←あくまでも私の推察です)、もしかしたらこの味わいは飲みやすさや親しみやすさを追求した結果であって、これも大関さんの社是である魁精神を具体化した成果なのかもしれません。



(※1)坂口謹一郎監修・加藤辨三郎編『日本の酒の歴史』p.644(長部文治郎執筆『ワンカップ物語』p.643-645中 1977.8 研成社)
(※2)ダイヤモンド・ビジネス企画編著『ワンカップ大関は、なぜ、トップを走り続けることができるのか?』p.13(2014.10 ダイヤモンド社)
(※3)黒井尚志『ヒット商品に秘密あり(14) ワンカップ大関 大関(21世紀の農家のための経営戦略 AGRIQUEST(アグリ・クエスト))』p.100(地上 59巻2号 p.99-101 2005.2 家の光協会)
(※4)聞き手=千田直哉、構成=小林麻理『The Interview +(プラス) 大関 代表取締役社長 西川定良 「ワンカップ大関」が発売50周年! 「魁精神」で新マーケットを切り拓く』p.77(Chain store age. 45巻17号 p.77-79 2014.10.1 ダイヤモンド・フリードマン社)
(※5)(※2)p.28
(※6)(※2)p.73
(※7)(※2)p.72
(※8)『ロングセラーブランドのコミュニケーション戦略 大関「ワンカップ大関」 業界に新風を巻き起こす 1964→2014』p.128(宣伝会議 878号 p.127-129 2014.12 株式会社宣伝会議)
(※9)(※2)p.77
(※10)(※3)p.100
(※11)(※2)p.79
(※12)(※2)p.136
(※13)(※2)p.138
(※14)(※2)p.52
(※15)(※2)p.88
(※16)(※2)p.183


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1000個目にあたって、思うところを少しだけ。


三年前の8月に書き始めたのですが、当初は近所で見つけた酒や、仕事で出かけた先で立ち寄ったスーパーで偶然に見つけたお酒、あるいはあくまでも観光目的で出かけた旅行先で入手したお酒などを紹介していくつもりでした。

ところが今となっては、このブログで紹介するお酒を集めることを第一目的としてあちらこちらへと出かけております。
それに、スーパーやコンビニを見つけると、真っ先に“酒コーナー”を目指して物色する癖がすっかりついてしまいました。

思えば、このブログを始めてからは、人との接触よりも酒との出会いを優先し、あるいは酒のためには金に糸目をつけずに散財 (貧乏人であることに変わりはないですので、大した額ではありませんが)するなど、常に酒を中心とした生活に移行してしまっております。

飲みたい酒を飲み、知りたいことを調べ、行きたいところへ酒を求めて出かけて行く。
私としては、そんな“酒を中心とした生活”がとても心地よいのです。
それ故、これからもこのブログを続けていくつもりです。

1000個目を超えても相変わらずくだらない内容のままでしょうが、読者の皆様におかれましては、こんな変わった酒の楽しみ方もあるのかと呆れながらお読みいただき、たまに鼻でクスリと笑っていただければ幸甚です。

【お酒】911.ハローズセレクション 淡麗辛口 清酒カップ [28.兵庫県の酒]

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販売者:株式会社ハローズ
広島県福山市南蔵王町6-26-7

製造者:櫻正宗株式会社
神戸市東灘区魚崎南町5-10-1

原材料名 米(国産)・米こうじ(国産米)・醸造アルコール・糖類・酸味料
アルコール分 14度
180ml
(以上、フタとラベルとより転記)




このお酒ですが、どうやら広島に本店を置くスーパーが企画した商品のようです。
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一方、造っているのは、1625年(寛永2年)創業の老舗であり、灘で宮水を発見したとされる(異論もあるようです)櫻正宗さんでした。
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そんな兵庫県は灘の名門である櫻正宗さんが造ったお酒ですが、糖類酸味料フル添加の三増酒でした。
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しかもこのお酒、お値段たったの105円(税込)でした。
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私がこれまでいただいた限りでは、櫻正宗さんが“櫻正宗”の名で販売なさっているお酒には、糖類添加の三増酒はありませんでした。
普通酒は上撰お燗瓶をいただいておりますが、もちろんこれにも糖類酸味料は添加されておりませんでした。

私は、櫻正宗さんについては、他の大手と比べて宣伝広告がひかえめで、酒造りについても儲けよりも酒質を重視する実直なイメージを抱いておりました。
それ故、今回、OEM生産ではあるものの、櫻正宗さんが今でも三増酒を造り続けていることを知って、かなりの心理的な衝撃を受けましたよ。

そうはいっても、世間には、100円前後で販売されている安いカップ酒が少なからず存在しております。
そういうカップ酒には、(“月”などの一部の例外を除いて)糖類や酸味料が添加されているものがほとんどです。
私はそういうお酒を飲みたいとは思いませんので、たとえ見つけても買わないことにしております。
しかし、このお酒だけは、櫻正宗さんが造り手であるということに惹かれて入手してしまいました。


そんな櫻正宗さんが造った三増酒をいただきます。
普通酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。

お酒の色は、ほぼ無色でした。
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一口含むと、アルコールの香りがはっきりしていることがわかります。

ああ、こりゃちょいピリですね。
すっぱさもわずかに感じます。

うまみは淡めというか、薄いですね。
薄いのでクドさはないものの、これは醸し出されたうまみではないと思います。
ただ、苦みがちょっとあるみたいです。

甘みはややはっきりしています。
糖添三増酒にありがちなとろみのような舌ざわりも少し感じます。


淡麗ちょいピリやや甘口のお酒でした。
アルコール香がはっきりしているのは、うまみが薄い(≒添加されたアルコールの割合が高い?)ことに起因するのかもしれません。
クドさはないので飲みにくくはないですが、ちょいピリでちょっと苦みがあることが気になりました。

一合を105円で販売するためには、このような味わいでよしとしなければならないのでしょうか?
というか、そもそもカップ酒をこのような低価格で販売する必要があるのでしょうか?

【お酒】722.龍力 大吟醸 米のささやき 300ml [28.兵庫県の酒]

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株式会社本田商店
兵庫県姫路市網干区高田361の1

アルコール分17度以上18度未満
原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)醸造アルコール
兵庫県特A地区産酒造好適米(心白米)山田錦100%使用
精米歩合 酒母・麹米40% 掛米50%
内容量 300ml詰
(以上、ラベルより転記)




本田商店さんのお酒は、かつて龍力の特別本醸造カップと、龍力の特別純米酒 昔の酒 180mlとをいただいております。
今日いただくこのお酒は、満を持しての大吟醸です。


このお酒は伊丹空港へ行った際に“空港銘酒蔵”というお店で入手したのですが、300ml瓶で1,296円もしたのです。

品質表示をみると、原料米には高価であると思われる特A地区の山田錦を100%使用し、しかもそれを半分以上削ってしまってから使っていることがわかります。
(特A地区の意味については、調べたことをかつてこちらでまとめておりますので、ご覧ください。)
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それにこのお酒は大吟醸ですので、きっと低温の環境で熟成させているでしょうから、そのための費用もかかっていることと思います。


さぞやおいしいお酒であろうと予想しつつ、そろそろいただいてみたいと思います。
“燗にするな!”と表示されていますので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。
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お酒の色は、ほぼ無色でした。
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アル添大吟醸だけあって、吟醸香がけっこうはっきりしています。
口に含むと、花のようなかおりが鼻へ抜けていきます。
ですが、香りにしつこさはなく、フワッと香った後でスッと引いて行きます。
それに度数が高めなせいか、アルコール香がちょっとはっきりしています。

うまみは淡めですが、しっかりしています。
お米のうまみそのものだと思います。
それが口にパッと広がって、スッと引きます。
一方で、苦みや雑味はまったくなく、酒臭さや熟成感もありません。

大吟醸だけあって、酸味はひかえめです。
ほとんど感じないくらいです。

甘みはひかえめですが、ゼロではないみたいです。
ごくわずかにあって、コクを添えている感じがします。


華やかな香りとともに、お米のうまみだけが抽出されたような、やや淡麗で旨やや辛口のおいしいお酒でした。
アルコール香がちょっと気になるかもしれません。
それでも、酒臭さや雑味だけでなく、酸味も抑えてあるのは、まさに大いに吟味して醸造した成果でしょう。
ですが、この澄んだ味わいは、これまでにいただいた龍力シリーズに共通しているようにも思いました。
私の好きな味わいとは正反対でしたが、こういうお酒もたまにはいいかと思います。
ていうか、この値段では、たまにしかいただけないごちそうでしょうね。

【お酒】695.本醸造 上撰 辛丹波 300ml [28.兵庫県の酒]

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大関株式会社
兵庫県西宮市今津出在家町4-9

原材料:米(国産)・米こうじ(国産米)・醸造アルコール
精米歩合70%
アルコール分15度以上16度未満
300ml
(以上、ラベルより転記)




辛丹波という名前が付いていますが、灘今津郷に蔵を構える大関さんのお酒です。
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大関さんのお酒は、かつてオダキュー天下の険の上撰カップと、創始者の名が付けられた大吟醸の超特撰大坂屋長兵衛とをいただいております。
今日いただくこのお酒は、“淡麗辛口”と銘打たれた本醸造です。
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このお酒ですが、私の住んでいる地域では、どこのスーパーへ行っても必ずあると言ってもよいほどよく見かけます。
酒集めの旅に出かけて、各地にあるスーパーの酒コーナーを覗いた際に、お目当ての地酒はなくてもこのお酒とワンカップ大関とだけはあって、がっかりしたことは数知れません。

今日はそんながっかりな広く販売されているお酒をいただきます。


また、このお酒のラベルには、“丹波杜氏伝承造り”と表記されています。
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“杜氏”というのは、「酒造工の長として杜氏補佐以下を総括、蔵内の管理全般」(※1)を職務とする人、すなわち酒造りのリーダーのことを指します。
しかし、「その出身地別に出身地名を冠して、杜氏個人またはその集団を「〇〇杜氏」とも呼ぶ。」(※2)そうです。

それ故、“丹波杜氏”とは、丹波地方を出身とする、杜氏とそれによって統率された酒造りの集団のことを指しているものと思われます。


この丹波杜氏ですが、「主として兵庫県、特に灘五郷の酒造に従事する杜氏として有名である。」(※3)と書かれているように、古くから灘五郷の蔵元さんとの結びつきが強かったようです。
すなわち、灘五郷で酒造りが発展した一因として、この丹波杜氏の存在があるようなのです。

なぜ、丹波杜氏は灘と結びついたのでしょうか。
というよりも、なぜ丹波の地で杜氏集団が形成されたのでしょうか。
これらのことについては、この記事の末尾で触れておきましたので、興味がおありの方はご覧ください。


というわけで、丹波杜氏伝承造りであるこのお酒を、そろそろいただいてみたいと思います。
本醸造ですので、今日もぬる燗でいただきます。

お酒の色は、無色でした。
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うまみは淡めですが、淡いなりに感じます。
酒臭さはなくて、やわらかいうまみです。
淡いせいでしょうか、苦みや雑味はありません。

酸味ははっきりしています。
すっぱさがかなり豊かです。
それに、ちょっとピリッと感じます。

甘みはひかえめですが、ゼロではないみたいです。
ほんのわずかですが、存在を確認することができます。


酸味が際立った、たしかに淡麗辛口のお酒でした。
これは酸味を味わうお酒でしょう。
甘みはわずかにあるものの、ちょいピリの酸味によって辛口に感じます。
雑味がなくてきれいな味わいですが、この酸味は好みの分かれるところだと思います。




★☆丹波杜氏発展の要因について★☆


丹波杜氏は、兵庫県の中東部、篠山市を中心とする地域を地盤とする杜氏とその集団のことです。
この地域は、灘の酒造業者から見れば六甲山を越えてちょっと行った辺りと、地理的には比較的近い場所です。

この地域で杜氏集団の形成が盛んになった理由はいくつかあるようですが、単に地理的に近かったからということだけではなく、とくに両者の利害が一致したことが大きいようです。

特に、江戸時代の中後期には、貨幣経済の浸透により、丹波の農民たちにとって冬期における副業の有無は死活問題ともなっていたようです。
それ故、農民側の利点(冬期における副業の獲得)は、酒造りの技術を必死に習得して酒造家の要望を満たすように彼らを動機付けた要因となったのではないでしょうか。


このことを述べている文献の記述を、以下に紹介します。

兵庫県の中東部、京都、大阪両府に界する多紀郡は徳川時代より、いわゆる「丹波杜氏」の出身地として広く世に知られている。農家の成年男子は稲の収穫が終われば灘五郷をはじめ各地方へ出稼ぎし翌年四、五月ごろ大枚の金を身につけて帰郷するという伝統的な慣習がある。」(※4)

丹波杜氏発生の外的要因として、地理的に丹波が酒造地池田、伊丹、灘目(武庫川下流より生田川にいたる灘五郷を含む地域)に近く(中略)、これらの地区における酒造業の発達にともなう、労働力や技術の需要を丹波に求めたものと思われる。
しかし、酒造出稼を丹波の農民にえらばせた直接的な原因は、この地方の気候条件が農業技術の幼稚であった往時において、農業の発達をさまたげ、農民が農業以外の他の副収入の道を求めざるをえなかったことにあろう。」(※5)

それでは何故、この地方の農民が、このように大挙して出稼するようになつたのであろうか。いわば出稼誘発の原因であるが、一般にはその地が冬期寒冷・積雪のため裏作の不能なことが指摘されている。(中略)江戸時代中頃までの未熟な農業技術をもつてしては冬期の裏作ということはなかなかの困難事であつたろう。裏作が不能であろうばそれだけ農民の生活が苦しいことはいうまでもない。
享保・元禄の頃を劃期とする貨幣・商品経済の急激な発達はこの勢に一段と拍車を加え、全国的規模において農民層の階層分化を押進めたのであつたが、このような形勢の下で、ともかくもかれらの生存を可能ならしめたものは、商品生産の発達に伴う副業の存在であつた。(中略)幸ともいおうか、この地方は丹波街道を通じて伊丹・池田・灘の大酒造地と繫り、而も耕作不能の農閑期と酒の生産期が都合よくマツチするため、ここに酒造出稼人として家計補充の方途を見出すことができたわけである。」(※6)


これらの文献では、丹波杜氏のことについてのみ論じております。
しかし、これは私の推測ですが、(地理的条件はともかく)これと同じことは江戸期から続いている杜氏集団の多くにも少なからずあてはまるのではないでしょうか。


(※1)灘酒研究会編『改訂 灘の酒 用語集』p.295(1997.10 灘酒研究会)
(※2)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.184(2000.4 柴田書店)
(※3)(※1)p.297
(※4)桑田昭三『丹波杜氏農業をこう見る-専業にまさる出稼ぎ兼業の農業基盤-』p.49(農林統計調査 第14巻第3号 1964.3 農林統計協会)
(※5)菅間誠之助『丹波杜氏(杜氏風土記)』p.48(日本醸造協会雑誌 第61巻第1号 1966.1)
(※6)井上洋一郎『酒神への奉仕者-丹波杜氏の歴史的考察-』p.23(経済人 第8巻第1号 1954 関西経済連合会)

【お酒】643.神鷹 サケカップ [28.兵庫県の酒]

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江井ヶ嶋酒造株式会社
兵庫県明石市大久保町西島919

原材料名 米・米こうじ・醸造アルコール
国産米100%
アルコール分15度
180ml詰
(以上、フタより転記)




江井ヶ嶋酒造さんの神鷹は、かつて普通酒のたる酒をいただいております。
今日いただくこの神鷹も普通酒ですが、こちらは樽酒ではありません。


普通酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。

お酒の色は、わずかにわかる程度でしょうか。
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うまみは淡めです。
しかし、醸し出された酒臭いうまみ(←ほめ言葉です)を感じますよ。
また、軽い苦みをわずかに感じます。

酸味はちょっとはっきりしています。
まろやかなすっぱさを感じる酸味です。
また、ごくわずかですが、ピリッと感じました。

甘みはひかえめです。
その存在をほんのわずかに感じる程度でした。


全体的に軽い口当たりではあるものの、お酒の味をちゃんと感じる、淡麗辛口のお酒でした。
淡くて軽い口当たりですが、うまみや酸味が軽いなりに存在しているので、物足りなさはないと思います。
それでいてクドさがまったくないので、食事とあわせやすいと思います。
これは完全に食中酒でしょうね。

そういえば、たる酒とは味わいがちがうようですが、別のお酒なのでしょうか?
舌がいいかげんなせいだろ。

【お酒】590.姫路城 純米 300ml [28.兵庫県の酒]

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製造元
名城酒造株式会社
兵庫県姫路市豊富町豊富2222-5
販売元
(株)光明兼光本店
兵庫県姫路市飾磨区構五丁目198

アルコール分 14度以上15度未満
原材料名 米(国産)・米こうじ(国産米)
精米歩合 70%
300ml詰
(以上、ラベルより転記)




このお酒の蔵元さんについて、文献では以下のように紹介されていました。
名城酒造は、元治元(1864)年創業の今井酒造を中心に姫路市内の6つの蔵元が昭和41(1966)年に合併して誕生した。(中略)」
140年以上の歴史を背に、伝統の味を守り続け、年間7千石、一升瓶にして70万本の清酒を生産。その量は播州でトップを争っている。今井専務は「お陰さまで北は北海道から南は鹿児島までと全国からご注文をいただいています」と“全国区”を強調した。」(※1)

このお酒が“全国区”であったおかげで、私も、仕事で出かけた先で見つけたスーパーで入手することができましたよ。
またサボってやがったな!


そんな“全国区”を強調なさっている蔵元さんが造ったこのお酒を、そろそろいただいてみたいと思います。
純米酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。

お酒の色は、ほぼ無色透明ですな。
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うまみは淡めです。
酒臭さはほとんどなく、むしろやわらかいうまみです。
ほんのちょっとだけですが、苦みを感じました。

酸味はしっかりしています。
うまみが淡いせいでしょうか、すっぱさがかなりはっきりしています。
刺激やピリピリ感はありません。

甘みは弱めですが、その存在はわずかにわかります。


酸味がさわやかな、淡麗爽快やや辛口のおいしいお酒でした。
この酸味は、八重垣の純米酒のそれに似ているように感じましたが、こっちのほうが飲みやすいでしょう。
濃いめの味付けの料理に合うと思います。
ふらり旅 いい酒 いい肴」を見ながらいただいていたら、あっという間になくなってしまいました。


(※1)神戸新聞総合出版センター編『播磨の地酒 こだわりの酒蔵めぐり』p.66(2010.10 神戸新聞総合出版センター)

【お酒】584.沢の鶴 本醸造 上撰 生酒 300ml [28.兵庫県の酒]

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沢の鶴株式会社
神戸市灘区新在家南町五丁目1番2号
(ここまで、ラベルより転記)

精米歩合70%
アルコール分13.5度
原材料名/米(日本産)・米麹(日本産米)・醸造アルコール
300ml
(以上、フタより転記)



灘五郷の最も西側“西郷”に位置する沢の鶴さんのお酒は、かつて特撰吟醸瑞兆と、普通酒の樽酒(酒道粋人)、そして本醸造の上撰お燗瓶をいただいております。
今日いただくこのお酒は、本醸造の生酒です。


このお酒ですが、ラベルには蔵元さんの名称と所在とが記載されているだけで、品質表示が全くなされておりません。
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品質表示は、フタにびっしりと表示されていましたよ。
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紙のラベルを貼らないお燗瓶であればこのような扱いもわかるのですが、ラベルが貼られているのに、どうしてラベルに表示をしないのでしょうか?


まあ、そんなこと、どうでもいいんですけれどね。
調べてないのかよ!

そろそろいただいてみたいと思います。
冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。

お酒の色は、ほぼ無色ですね。
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一口含むと、フレッシュな風味を感じます。
ですが、それほど強くはなくて、ほんのりと感じる程度です。

うまみは淡めですが、しっかりしています。
やわらかいうまみに、ほんのわずかですが酒臭さ(←ほめ言葉です)を感じます。
苦みや雑味はないですね。

酸味はひかえめです。
すっぱさをほんのわずかに感じる程度です。
刺激やピリピリ感は全くありません。

甘みは弱めですが、弱いなりにその存在はわかります。
ベトつきはまったくなくて、さらっとした甘みです。


フレッシュな風味とやわらかいうまみとに、甘みをちょっと感じる、淡麗旨口のおいしいお酒でした。
アルコール度数13.5度と低めであることから、加水が多くて物足りないかと思ったのですが、そんなことはないですね。
それでも淡めで、スイスイと行けてしまいます。
暑いときにはビールもおいしいですが、こういうお酒だっていけると思うんですがね。
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