So-net無料ブログ作成

【お酒】424.425.天吹 超辛口特別純米酒&吟乃紅衣 飲み比べ [41.佐賀県の酒]

1191.JPG
天吹酒造株式会社
佐賀県三養基郡みやき町大字東尾2894



今日いただくこれらのお酒は、“花酵母”なるものを使用して醸造されているようです。
これはどうやら、自然の花から採取した清酒酵母であるとのこと。
この花酵母については、東京農業大学が主宰し、全国の蔵元さんが参加する“花酵母研究会”なる集まりもあるようです。


佐賀の酒を紹介している文献では、天吹酒造さんの花酵母を使用した酒造りについて、以下のように紹介しています。
天吹酒造(あまぶきしゅぞう:ブログ筆者追記)では2000年から、花酵母「なでしこ酵母」をスタート。(中略)ナデシコやベゴニアなど9種類で、山田錦などの酒米との組み合わせが味わえます。」(※1)
また、天吹酒造さんのWebsiteでは、この9種類の花と、それらを使ったお酒を紹介しています。

この花酵母については、この記事の最後でまとめておきましたので、ご覧いただければと思います。




1192.JPG1193.JPG
1194.JPG
天吹 超辛口特別純米酒 山田錦
酵母 ベゴニア酵母
原材料 山田錦100%使用
精米歩合 60%
アルコール分 15度
原材料名 米、米こうじ
内容量 180ml
(以上、ラベルより転記)


蔵元さんのWebsiteでは、私の記事など要らないくらいに、このお酒の味について詳しく紹介されています。
(特別)純米酒ですが、常温または冷やして飲めと紹介されていますので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。
その前に、カメラが安物なせいでわかりづらいですが、このお酒にはほんの少し色がついています。
1195.JPG


一口含むと、吟醸香のような華やかな香りを感じます。
しかもけっこうしっかりしていて、口の中に残ります。

うまみは淡めです。
酒臭さはひかえめで、お米のうまみそのものです。
苦みや雑味はまったく感じません。

酸味はどちらかというとひかえめです。
すっぱさを少し感じ取ることができるくらいです。
刺激やピリピリ感はありません。

甘みはほとんど感じません。


華やかな香りに、お米のうまみとさわやかなすっぱさとを感じ取ることができる、淡麗辛口のお酒でした。
甘みをほとんど感じないことから、たしかに“辛口の=甘くない”お酒だと思います。
しかし、刺激がないので、辛くは感じませんでした。
上品な味わいのお酒だと思います。





1196.JPG1197.JPG
1198.JPG
天吹 吟乃紅衣(ぎんのくれない) 紫黒米
酵母 なでしこ酵母
アルコール分 16度
原材料名 米、米こうじ
内容量 180ml
醸造責任者 木下大輔
(以上、ラベルより転記)


蔵元さんのWebsiteには、このお酒には古代米を使用していることが紹介されています。
それとともに、「製造方法は吟醸造りですが古代米は農産物検査法の適用が無いので純米吟醸とは名乗れないのです。」と記載されています。

たしかに吟醸酒は「精米歩合60%以下の白米、米こうじ及び水、又はこれらと醸造アルコールを原料とし、吟味して製造した清酒で、固有の香味及び色沢が良好なもの」と定義されており(※2)、その白米は「農産物検査法(昭和26年法律第144号)により、3等以上に格付けされた玄米又はこれに相当する玄米を精米したものをいうものとする。」と定められています(※3)。

この農産物検査法は古代米を規格の対象としていないことから、それを使用して造られたお酒は吟醸酒を名乗ることができないのでしょう。


このお酒も常温または冷やして飲めと紹介されていますので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。
その前に、このお酒には古代米由来と思われる赤い着色とともに、わずかに滓りがあるようです。
1199.JPG


このお酒も、一口含むと華やかな香りを感じます。

うまみはやや濃いめです。
酒臭さはなくて、お米のうまみがそのまま出ているようです。
ほんのわずかに苦みを感じますが、それ以外に雑味はありません。

酸味はこれもひかえめです。
すっぱさはややはっきりしています。
刺激やピリピリ感はありません。

甘みは強くはないですが、けっこうはっきりと感じます。


華やかな香りとお米のうまみとに、すっぱさと甘みとを感じる、やや濃醇でやや甘口のお酒でした。
古代米を使ったことで、うまみがやや濃厚になっているのでしょうか。



ところで、今日いただいたお酒は、いずれも華やかな香りが豊かなものでした。
一方、酵母の働きについて、(主たる働きがアルコール発酵であることを前提として)「アミノ酸を体内に取り入れて、菌体をつくり増殖しつつ、フレーバー物質としての高級アルコール類を生成し、なお、これらの成分と酢酸や脂肪酸とを結合させて芳香成分のエステル類をつくる。」と述べている文献がありました(※4)。

もしかして、今日いただいたお酒の華やかな香りこそが、花酵母の特徴なのでしょうか。




☆★花酵母について☆★


(1)酵母≒きょうかい酵母

酵母は、糖分をアルコールに変える働きをする微生物です。
日本の酒造りでは、ほとんどの蔵元さんが“きょうかい酵母”というものを使用しています。

きょうかい酵母とは、「(公財)日本醸造協会が純粋培養、頒布している優良酵母」のことで、「主として優良酒を醸造した酒蔵のもろみ、または酒母から酵母を分離し、それを純粋培養したもの」です(※5)。
きょうかい酵母が登場した事情については、かつてこちらでまとめておりますのでご覧ください。

多くの蔵元さんできょうかい酵母が使用されるのは、それが優秀で安定した酒造りをすることができるからでしょう。
特に、吟醸酒の繊細な風味を出すためには、きょうかい酵母は有効であると思います。


(2)きょうかい酵母を使用することの弊害:多様性欠如による日本酒離れ

ある文献では、きょうかい酵母を使用し続けることの弊害について、以下のように述べています。
きょうかい酵母の頒布は1906年に始まったが、(中略)この限られた種類の酵母で醸造するために今日の日本酒の多様性が狭まっているように考えられる。」(※6)

またこの文献は、このことが日本酒離れの原因であるとも述べています。
成人一人あたりのアルコールの消費数量は、平成十一対して六年度比で九九・一%、やや減少しているもののほぼ変化なしと言っていい。一方、清酒(日本酒)の同消費量は、平成十一年度(対平成六年度)比は八一・九%であり、激減している。
清酒激減の理由としては(中略)いろいろ考えらえる。しかし、清酒メーカーとしてさまざまな消費者の飲酒ニーズに添った商品を開発してきたかということを自問自答すると十分だったとは言えない。
今までの清酒に欠けているものはなにかということを考えた場合、ひとつとして清酒の多様性の欠如が挙げられる。」(※7)


(3)花酵母採用の意義:地酒の個性復活

同じ文献では、花酵母を採用することの意義について、以下のように紹介しています。
自然の花から清酒酵母を採取して清酒を醸造する試みは、まだ始まったばかりであるが、この手法によりさまざまな個性ある清酒が登場する可能性がある。
さらに、この方法は、きょうかい酵母が頒布される以前の蔵付き酵母を使っていたころの地酒を復活させる試みであることを指摘しておきたい。生酛(きもと)という伝統的な酒母造りの手法は、野生清酒酵母を集積する手法であり、蔵付き酵母というのも元は野生の酵母である。野生の清酒酵母を使用することにより、かつてあった地酒の個性を復活させる手法としてこの花からの清酒酵母を分離させる試みは有効であると言える。」(※8)


(4)なぜ、花からなのか?:清酒酵母が集りやすい

これについて別の文献では、以下のように説明しています。
清酒酵母が自然界で最も集積される環境は、糖源の存在する場所、すなわち果実、花と考えられる。果実ではワイン酵母と考え、花に着目した。」(※9)

そして、花から清酒酵母を分離する方法については、以下のように書かれています。
自然界では、Pichia, Hansenula属のようなビタミンを要求しない雑食性の酵母が支配的であり、直接分離するの困難であるため、清酒酵母が優先的に集積する培地(中田 ・他、1979)へ試料を添加し、培養を行った後に清酒酵母を選択的に分離した。」(※9)



(※1)平尾茂『佐賀酒ものがたり』p.22(2014.1 西日本新聞社)
(※2)清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)1
(※3)同1(2)
(※4)秋山裕一・熊谷知栄子『吟醸酒のはなし』p.86(技報堂出版 1987.5)
(※5)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.106(2000.4 柴田書店)
(※6)東田雅彦・岡賢太郎・南條倫夫『花酵母を利用した日本酒の開発』p.92(食品と化学 43巻10号(通号558) 2001.10 食品と科学社)
(※7)(※6)p.92
(※8(※6)p.95
(※9)中田久保『花酵母の利用と商品開発』p.37(農林水産技術研究ジャーナル 29巻6号 2006.6 公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会)
nice!(28)  コメント(8)  トラックバック(1) 

nice! 28

コメント 8

ojioji

興味深く読ませていただきました。
今、ぼくも醸造中(念のため家庭内です)で、日本酒の旨味にかかわるのは酵母よりも麹かなと感じております。

日本酒の専門書などは全く読んだことがないので、あくまで体験上です。
身も蓋もないことを言えば、化学調味料ラーメンと同じで、それなりに美味しい日本酒の味を調合するほうが手っ取り早かったこともよくわかりました。
一方、日本酒の味の多様性を追求する今回の蔵元さまのような取り組み、有意義で発展性があると思います。この業界は頑固で保守的な方も多いので、今回のようなお酒がどんどん出回ってほしいです。
by ojioji (2014-12-21 21:48) 

takechan

お酒も奥が深いでですね。
何も考えずに、ただひたすら飲んでますが。
by takechan (2014-12-21 21:53) 

skekhtehuacso

ojiojiさん、コメントありがとうございます。
私が文献を読んだ限りでは、麹は味に、そして酵母は香りに影響を与えると言われているみたいです。
味を調合するのは手っ取り早いかもしれませんが、私の経験では、糖類酸味料を添加したお酒の味や、それすらしない合成清酒の味などは、きちんと造ったお酒には到底及ばないと思います。
大手のお酒でも、きちんと造ったものはおいしいですし。

by skekhtehuacso (2014-12-21 22:32) 

skekhtehuacso

takechanさん、コメントありがとうございます。
なにも考えずにいただいたほうが、おいしくいただけると思います。
あれこれと余計なことばかり考えている私は、おいしいお酒すらおいしくいただいていないのかもしれません。
by skekhtehuacso (2014-12-21 22:35) 

ちゅんちゅんちゅん

こんにちは!
花酵母なんてあるのですね(゜o゜)
ベゴニア なでしこ・・・
お祝いごとに合いそうな感じがします✿
by ちゅんちゅんちゅん (2014-12-22 14:55) 

skekhtehuacso

ちゅんちゅんちゅんさん、きっと吟醸酒は、もっと香りが華やかだと思いますので、お祝いの品にはよいのではないかと思います。

by skekhtehuacso (2014-12-22 22:25) 

スミッチ

奈良の春鹿さんに、八重桜から採った酵母で造った酒があり飲んだ事がありますが、味が思い出せない。
古代米のお酒飲んでみたいですね。
by スミッチ (2014-12-23 16:55) 

skekhtehuacso

スミッチさん、コメントありがとうございます。
今西清兵衛商店さん(春鹿)にもあったのですな。
どうやら『奈良の八重桜』ってやつがそうみたいですね。
http://www.harushika.com/fs/harushika/gd53
日本酒度-28とのことですから、きっと甘口なのでしょう。
by skekhtehuacso (2014-12-24 23:11) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1