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【お酒】1276.阿蘇の酒れいざん 本醸造 カップ [43.熊本県の酒]

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山村酒造合名会社
熊本県阿蘇郡高森町高森1645

原材料 米(国産)・米麹(国産米)醸造アルコール
アルコール分 15度
精米歩合 70%
180ml詰




阿蘇山の麓、高森町。
南阿蘇鉄道の高森駅の近くに蔵を構える蔵元さんのお酒でした。


南阿蘇鉄道は去年発生した地震で被害を受けて、今でも一部が不通となっています。
しかもJR豊肥本線と接続できず、その線路は陸の孤島と化しておりますね。
観光利用を見込むには非常に不利な状態が続いておりますが、高千穂鉄道の二の舞だけはなんとか避けてもらって、全線復旧まで持ちこたえてもらいたいものです。


その高森町に蔵を置く山村酒造さん。
“れいざん”という酒銘は“霊山阿蘇”に由来するのだとか。

その山村酒造さんの由来について、手元にあった文献に以下の記述を見つけました。
 豊後屋、山村酒造は創業宝暦一二年(一七六二)というから、もう二〇〇年以上もこの南郷谷で酒造りに携わってきたのである。現在の酒蔵は万延元年(一八六〇)に建てられたもので、それから数えてさえ一三八年も経つ。しかも、山村家そのものは、酒造りを始めるずっと以前に高森に根づいたのである。天正年間(一五七三~一五九二)、薩摩の島津氏と豊後の大友氏が高森城をめぐって激しく争った折り、豊後の国東半島の山村荘から武士団が大友氏の援軍として駆けつけた。そして土着したのだという。だから、以前はここには豊後から杜氏さんが来ていたそうである。」(※1)


では、そんな大友氏ゆかりの蔵元さんが造った阿蘇の酒をいただきます。
本醸造ですので、今日もぬる燗でいただきます。
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お酒の色は、ほとんど目立ちませんでした。
少し透き通った感じがしました。
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色のイメージとは異なって、うまみは濃いめです。
かなり酒臭くて(←ほめ言葉です)、ちょっとくどいかな(ほめてないじゃないか!)。
それに、苦味を少し感じます。
でもキレはよく、透明感すら感じます。

酸味はややひかえめです。
すっぱさに鋭さを感じるものの、弱めです。
刺激やピリピリ感はありません。

甘みはかなりはっきりしています。
とろみのような舌触りはないものの、カップに口を付けたときに唇にべとつきを感じます。


しっかりしてい甘めではあるものの、キレよく透明感を感じる、濃醇ちょい苦キレ甘口のお酒でした。
ずっしりとしていてかなり甘いものの、キレがよいので飲みにくさはそれほど感じませんでした。
これは私の予想ですが、特定名称酒の上限いっぱいまでアル添をしているのかもしれませんね。

それにしても、かなり甘めでしたよ。
でも、とある雑誌には、別の蔵元さんを紹介する記事で「「ここは熊本。辛口の酒が呑みたい時は、焼酎がありますから」」(※2)という言葉が紹介されておりましたように、たしかに熊本には球磨焼酎がありますから、清酒に辛口酒の役割は求められていないのでしょう。

むしろ熊本では、清酒の普及が図られた明治末期~大正期までは「加藤清正が朝鮮半島から伝えたという伝説があり、古くから「肥後の赤酒」として知られている。甘味が強く粘稠性を帯びた酒」(※3)が愛飲されていたようですから、甘口酒を受け容れる伝統が根づいているのかもしれませんね。


(※1)前山光則・江口司『山里の酒―九州蔵元紀行』p.161-162(1999.12 葦書房)
(※2)古典酒場特別編集『熊本酒援酒場 VOL.1』p.30(2016.12 三栄書房)
(※3)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.178(2000.4 柴田書店)
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《焼酎》6.黒霧島 200ml [9945.宮崎県の焼酎]

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霧島酒造株式会社
宮崎県都城市下川東四丁目28番1号

原材料/さつまいも、米こうじ(国産米)
アルコール分/25%
内容量/200ml
南九州産さつまいも100%使用
(以上、ラベルより転記)




昨日の白霧島に引き続き、今日も霧島酒造さんの芋焼酎をいただきます。
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今日いただくこの黒霧島もいも焼酎ですが、こちらには黒麹菌が使用されているのだとか。
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一方、昨日いただいた白霧島で使用されていた麹菌は、白麹菌でした。
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どうやらこの黒麹菌と白麹菌とは、もともとは同一種だったそうです。
当初は黒麹菌が普及したものの、その中から白色の変異株が見つかって、それを培養した白麹菌が戦後になってから広く使われるようになったのだとか(後掲(※6))。

黒麹菌が使われるようになる前は、焼酎の製麹でも清酒と同じ黄麹菌が使われていたそうです。
しかし、黄麹菌は酸を出さないことから、酵母の増殖には乳酸菌が出す乳酸の力を別途借りる必要があり(酵母は酸に強いものの、雑菌は酸に弱いことから、酸性下では酵母だけが育つのです。)、しかもその酵母の増殖は腐造防止のために低温下でなされる必要があることから、温暖な南九州の気候には合わなかったそうです。

一方、「黄麹菌はクエン酸をほとんど生産しない。黒麹菌と白麹菌はクエン酸を生産し、製麹後半に温度を35℃に下げることでクエン酸の生産を促進することは明らかであるが、その機構は未だ解明されていない。クエン酸の重要性として、本格焼酎の製造は主に南九州や沖縄といった温暖な地域で行なわれるため、もろみが生酸菌などの雑菌に汚染される危険性が高く、汚染すると焼酎の品質やアルコール収得量の低下を引き起こす。しかし、麹に含まれるクエン酸が一次もろみのpHを3.0~3.5に低下させるため、雑菌の増殖が抑制できる。そして耐酸性に優れた焼酎酵母が優先的に増殖し、もろみが腐造することなく発酵が行われる。クエン酸は不揮発性の有機酸であり蒸留しても焼酎には含まれないため、焼酎は酸っぱくならない。」(※1)のだとか。

しかもこの場合、「焼酎もろみは高温(三〇度前後)経過で、しかも長期に発酵させても安全にもろみができる。」(※2)のであって、その理由は上述のとおり「白(黒)麹に生成されるクエン酸がもろみを酸性にしてくれるのでもろみが腐らないのである。」(※2)とのこと。

黒麹菌(と白麹菌と)を用いた醸造は、南九州の温暖な風土に合っていたのですね。



この黒麹菌は、もともとは沖縄で泡盛の仕込みに使用されていたとのこと。
それが大正中期に、まず鹿児島県で焼酎造りに導入され、その後全国へ広がっていったそうです。

このことについては、以下のような記述がありました。
黒麴菌の鹿児島への導入は明治40年頃、鹿児島の泡盛製造に用いたのが最初で、甘藷焼酎には翌年使用されている。」(※3)
その後、明治40年の沖縄泡盛の指導調査にあたった河内源一郎が明治43年に鹿児島税務監督局技師として赴任し、黒麴による甘藷焼酎製造の指導にあたるが、
(中略)
大正2年に泡盛麴菌が酸を夥しく生産することが発表され、大正3年には小試験の結果、垂れ歩合良好で香味もよいということで黒麴菌の試醸が推奨されているので、この頃から甘藷焼酎への使用が急速に普及したものと考えられる。」(※3)

その後、「球磨の米焼酎では昭和15年まで黄麴仕込みでその後黒麴に代わるが、昭和25年でも27%は黄麴を使っていた。壱岐の麦焼酎でも黒麴に代わったのは昭和17年のことである。球磨も壱岐も鹿児島の甘藷焼酎の二次仕込法の導入と同時に黒麴菌の使用が始まっている。」(※3)という記述にあるとおり、黒麹菌は鹿児島の芋焼酎のみならず、熊本の球磨焼酎や長崎の壱岐焼酎(麦焼酎)でも使われるようになったとのことでした。



ですが、この黒麹菌には問題もあったようです。

それは、「しかし黒麹菌は、その名の通り胞子が黒い。この胞子が飛び散って、酒造りの器具や蔵人の衣服などが汚れるという、そんなデメリットがあった。」(※4)のだとか。
またこのことについて別の文献には、「ただ、困ったのはその胞子の黒さである。黒麹というだけあって、見事に真っ黒の米麹ができあがる。室に入っていた破精蓋から黒麹をとり出すと、服はもちろん、鼻から口まで真っ黒になり大変なことになった。外に干していた洗濯物にも付着して汚れた。身内や蔵人はまだしも、困ったのは近所からの苦情だった。そのころ壱岐では味噌、醤油は各家庭で手造りしており、その味噌が黒くなるというのだ。麹菌の胞子は目に見えない大きさだ。黒麹がその原因と分かっていても、どうすることもできなかった。」(※5)という記述すらありました。


その後、黒麹菌の中から色が白い変異株である白麹菌が発見され、戦後になってからそれが普及したことから、黒麹菌を使う蔵は減少したそうです。
このことについて、以下の記述を見つけました。
 その後、沖縄の黒麹菌の中から性質はほぼ同じで色の黒くない菌株が発見され、発見者の河内源一郎の名にちなんで、アスペルギルス・カワチと命名されました。それまで、原料全部が麹である泡盛に比べていも焼酎では麹の割合が少ないために、より麹をすすませて酵素力を高めた麹を使う必要がありました。そのために黒麹の胞子の飛散による作業性の悪さが問題となっていたのです。
 この白麹菌の登場により、黒麹から白麹への転換が急速に進んでいきました。昭和二五年度の熊本国税局管内(鹿児島、宮崎、熊本、大分)では、黒麹七四%、白麹一六%、黄麹一〇%だったものが、昭和四五年度には黒麹、黄麹ともにほとんど使用されなくなり、ほぼ白麹一〇〇%になっています。」(※6)



そんな取り扱いの難しい黒麹菌でしたが、最近ではその味わいが再評価されて、「銘柄に黒が付いた焼酎(例えば、黒〇〇)は黒麹を使ったものであり濃醇なタイプ白麹製は端麗ですっきりしたタイプといわれている。」(※7)と評されているようです。

なぜ、黒麹のほうが濃醇な味わいになるのでしょうか?

その理由として、以下のような記述に出会いました。
 麹菌は澱粉や蛋白質、脂質などを分解する酵素の他に、芋焼酎の風味形成に不可欠なβ-グルコシダーゼを生産する。この酵素は、サツマイモに含まれるモノテルペン配糖体を発酵中に加水分解し、柑橘の香り成分であるゲラニオール、ネロール、リナロール、α-テルピネオール、シトロネロールなどのモノテルペンアルコール(MTA)の生成に寄与している。MTAは芋焼酎特有の成分で“癒し”効果のある香りといわれている。
(中略)
また、黒麹菌のβ-グルコシダーゼ活性は白麹菌の約3倍高い。黒麹製の芋焼酎はMTAの濃度が白麹製と比べて1.5倍高いため、黒麹製の焼酎がより個性的であるといわれる要因といわれている。」(※8)

 種類の異なる麴について、β-グルコシダーゼ活性を測定したところ、甘藷焼酎の製造に一般的に使用されている河内菌の白麴に比較的強い活性があり、クエン酸を生産させるために通常行われている後半の温度を低くする(35℃)経過で活性が強いこと、製麴の終盤に急激に活性が強くなることが明らかになった。また、沖縄の泡盛の製造に用いられる黒麴は白麴より活性が強く、清酒の製造に用いられる黄麴は白麴より活性が弱かった。品質の多様化をねらって、黒麴を用いると香味の強いものが、黄麴を用いると香味の穏やかなものができる傾向があるが、これらの現象と麴中のβ-グルコシダーゼ活性の強さはよく符合する。」(※9)

最近では黒麹を使用する蔵元さんが増えているみたいですが、これは上記(※9)に「品質の多様化をねらって」とあるとおり、黒麹仕込の濃醇な味わい・強い香味を求めてのことなのでしょうね。

また、これはわたしの予想ですが、近年ではかつてよりも麹の管理が徹底していて、飛散防止のための対策が採られていることから、麹菌の飛散による影響を考慮する必要がないのかもしれませんね。
あるいは、黒麹菌自体の品種が改良されて、飛散しにくい黒麹菌が作り出されているのでしょうか?
すみません、これらについては調べが及びませんでした。



とまあ、以上が文献調査でわかった内容でした。
では実際に黒麹菌を用いて造られた芋焼酎をいただいて、その味わいを確認してみることにいたしますよ。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




まずは、生(き)、すなわちストレートで。
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白霧島とおなじく、臭みはまったくありませんね。

やはり香りがはっきりしていますが、こちはら香ばしい香りですね。
この香ばしさは、香りのみならずうまみにもなっていますね。
それに、酸味と甘味とを少し感じます。
アルコール香はあるものの、白霧島ほど気にはなりません。
でも、こちらはちょいピリでした。




次に、お湯割り(焼酎:お湯=6:4)にしてみましたよ。
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口をつける前から、香ばしい香りがフワッと漂ってまいりました。

香りもうまみも香ばしさがよりいっそうはっきりしてきて、味わいに厚みが出てきましたね。
酸味と甘みとは引っ込んだようです。
また、軽い苦味がちょっとだけ出てきたようでした。




最後は、残ったものをロックで。
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トロッとした口当たりに変わりましたよ。
それに、香ばしさと軽い苦味とが前に出てきて、これが一番香ばしいかもしれません。
特に、焼酎を喉に流したあとで、舌の付け根あたりに香ばしさが残ります。
酸味は残るものの、甘味はお湯割りと同様にひっこんで、かなりキリッとしてきましたよ。



香ばしくておいしい焼酎でした。
白霧島のような華やかな香りはありませんでした。
ですが、こっちのほうが香ばしさがあって、味わいに厚みを感じました。
中でも私としては、味わいの厚みを最も感じることができたお湯割りが好みでした。

白霧島は雑味がなくてきれいですっきりしていて、香り高い芋焼酎でした。
一方、黒霧島は香ばしさが豊かで厚みのある味わいでした。
私としては、軽い苦味が少しあるものの、黒霧島のどっしりした風味のほうが好みですわ。



(※1)髙峯和則『焼酎と微生物』p.293-294(モダンメディア 61巻10号 p.290-297 栄研化学 2015)
(※2)鹿児島県本格焼酎技術研究会『かごしま文庫(62) 鹿児島の本格焼酎』p.33(2000.6 春苑堂出版)
(※3)鮫島吉廣『本格焼酎製造方法の成立過程に関する考察(その2)』p.829(日本醸造協会誌 84巻12号 1989.12)
(※4)白川湧『本格焼酎をまるごと楽しむ』p.61(2007.6 新風舎)
(※5)山内賢明『壱岐焼酎 蔵元が語る麦焼酎文化私論』p.99(2007.11 長崎新聞新書)
(※6)金羊社発行『焼酎楽園 Vol.4』p.39〔鮫島吉廣『焼酎を科学する4 黄麹菌から黒麹菌へ、そして白麹菌』( p.38-39)内〕(2000年12月 星雲社)
(※7)髙峯和則『芋焼酎の香りの正体を求めて』p.23(New Food Industry 55巻12号 p.22-30 食品資材研究会 2013.12)
(※8)(※1)p.294
(※9)太田剛雄・下條寛和・橋本憲治・近藤洋大・佐無田隆・大場俊輝『白麴のβ-グルコシダーゼ活性と甘藷焼酎香気への寄与』p.538(日本醸造協会誌 86巻7号 p.536-539 1991)
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《焼酎》5.白霧島 200ml [9945.宮崎県の焼酎]

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霧島酒造株式会社
宮崎県都城市下川東四丁目28番1号

原材料/さつまいも、米こうじ(国産米)、芋こうじ
アルコール分/25%
内容量/200ml
南九州産さつまいも100%使用
(以上、ラベルより転記)




先日いただいた“いいちこ”に引きつづき、今日も焼酎のうち“世間で広く飲まれている銘柄”を選んで飲んでみることにいたします。

今日選んだこの焼酎は、芋焼酎です。
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広く飲まれている芋焼酎ということで、当初は鹿児島の“さつま白波”をいただこうかと思っておりました。
しかし、昨今では宮崎県都城市に蔵を置く霧島酒造さんのこの霧島シリーズが広く普及しつつあるとのことで、こちらを選らんでみましたよ。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

ところで、かつての芋焼酎には、ニオイが強いものがありましたね。
私が子どもの頃に父親が飲んでいた芋焼酎のお湯割りのニオイは、それはとても強烈でしたよ。
「こんなクサイものを飲む奴の気が知れない」と、子ども心に思ったくらいでした。

ですが、昨今の芋焼酎には臭みがなくてマイルドなものがけっして少なくないのだとか。


なぜ、風味がこうも変わったのでしょうか?
理由はいくつか想定し得ると思いますが(醸造技術全体の改良や、ろ過による原因物質除去の精度向上など)、特に注目に値すると思われる記述を、とある文献中に見つけました。

 焼酎の酒質に大きな変化が起きるのは昭和50年代に入ってからのことである。南九州の焼酎が北上するにつれ、品質の向上と酒質の保全への取り組みが始まった。芋焼酎では原料のサツマイモを一個一個手にとって傷のある部分を丹念に切り落とすようになり、芋傷み臭と呼ばれる欠点臭の発生を抑えるようになった。その後、育苗や栽培方法の改良、品種の選抜が行われるよになり、コガネセンガンに代表される優良品種が選定されるようになった。現在ではサツマイモ品種の焼酎の香味に与える影響が明らかになりつつあり、特徴的な香味を持つ芋焼酎の開発につながっている。」(※1)

上記の記述には“芋傷み臭”という言葉が出てきましたが、どうやらこれが芋焼酎のニオイの正体なのだそうです。
この芋痛み臭については、別の文献に以下のような記述がありました。

 このサツマイモで造った焼酎は柔らかな風味と甘味が特徴といえる。しかし病害虫に弱く、貯蔵性が悪いため、畑から掘り出した後一両日中に仕込まなければならない。傷んだ部分は削り取るが、少しでも残ると「芋イタミ臭」といわれる一種独特の臭いが焼酎に付いてしまう。」(※2)

 近年の大きな流れとして焼酎製造を技術的にみるとメーカーは消費者志向に対応してソフトで華やかな香りをもつ製品の開発を進めてきた。先行したのは芋焼酎であったがその後、麦焼酎、そば焼酎、米焼酎が芋焼酎の守ってきた製法を進めて九州外のニーズに答えていった。結果として癖のないソフトで華やかな香りをもつ製品が多くを占めることになる。これは南九州以外の土地での売れ行きの向上という大きな面もあったが、酒質の均一化という現象も生み出した。総じて、それぞれの原料の特徴を残しながら、芋焼酎では原料芋の選別、米焼酎では減圧蒸留の採用、麦焼酎では精製処理をすることで、製品の芋痛み臭の減少、油臭の除去、末ダレ臭の減少により臭いが減少したと考えられる。」(※3)

 本格焼酎の香味の特徴はまず不均一性にあると言える。まず原料がそれぞれ異なると香味が違うのは当然であるが、各原料も実際は均一に見えて実はそうではない。穀類は総じて均一だが、サツマイモは品種間で大きく異なり、また、同品種でも天候、気温、植え付けした畑の土壌、同じ固体でも表面と内部でもそれぞれ微妙に違っている。原料の良し悪しが最終製品の香味、特に香りに影響する。単なる擦り傷、低温傷害でも苦味物質や芋イタミ臭が発生するなど原料の厳選や処理には十分な注意が必要である。」(※4)

きれいに洗浄したサツマイモを、人の手で一個一個丁寧にヤニが多く含まれている両端を切り、また傷んだ箇所があれば、そこを取り除く。特に黒斑病、線虫等の病気や害虫に侵されているサツマイモは、いも焼酎の酒質に影響を及ぼすので、完全に除去しておく必要がある。この工程は機械化できず、人手に頼っている。」(※5)

これらの記述からわかることは、芋痛み臭のない芋焼酎を造るためには、さつまいもの鮮度のみならず、たとえ新鮮なさつまいもでも傷や低温傷害あるいは虫食いで痛んだ部分を人の手で丹念に取り除く必要があるということですね。
逆に言えば、近年になってから、芋傷み臭の発生を防ぐためには原料芋の選別・管理が必要であることがわかり、それを徹底するようになったことから、かつてのようなニオイの強い芋焼酎は姿を消しつつあるのでしょう。

さらに、「芋焼酎では減圧蒸留法はほとんど導入されていない。その理由として、酒質が常圧蒸留した焼酎と全く異なることと、もろみ粘度が麦焼酎と比べて30倍以上高いため熱伝導性が悪くもろみが焦げ付く可能性が高いためである。(中略)もろみのアルコール濃度が低下すると蒸留機の形状などにもよるが、一般的に蒸留歩合や原酒アルコール濃度は低下する。(中略)もろみに水を加えることで粘性は低下し減圧蒸留が可能となるが、上述の問題が生じることとなる。」(※6)という記述にあるとおり、芋焼酎では減圧蒸留によって香味成分の生成を防止することが難しいそうですから、(ろ過による香味物質の除去はともかく)原料芋の選別と管理とは穀類を原料とする場合よりもよりいっそう重要視されるのでしょうね。


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では、いただいてみたいと思います。




まずは、生(き)、すなわちストレートで。
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上記で紹介した文献にあったとおり、全然臭くないですね!

口当たりはかなり淡いですね。
うまみをほとんど感じないくらいです。

でも、香りが豊かで、しかも華やかな香りがフワッとしますね。
といっても、お酒(いわゆる日本酒)の吟醸香とはちがって、クドさがなくて落ち着いた香りです。

苦味や雑味はまったくなく、ピリピリ感もありません。
それに、甘味も感じませんね。
ただ、25度だけあってスーッとしたアルコールの香りが少し目立ちます。




ここで、お湯割りにしてみましたよ。
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アルコールのスーッとした感じは少し残るものの、それでも和らいでまろやかになりました。
香りは華やかさが最初に来て、芋っぽさのような香ばしさが下の付け根から鼻腔の入口辺りにかけて残り香のようにごくかすかに残るようです。
また、軽い苦味がちょっとだけ出てきたみたいです。




最後は、残ったものをロックで。
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生(き)と同様に、香りはやはり華やかです。
一方で、軽い苦味がお湯割りよりもちょっとはっきりしてきたようです。
ですが、甘みはこのロックが一番はっきりしているようです。



香りが豊かでおいしい焼酎でした。
清酒(いわゆる日本酒)みたいな舌の上に乗っかるようなうまみはありません。
でもね、芋焼酎には華やかではあるもののクドさのないよい香りがありましたよ。
また、これまでにいただいた米焼酎や麦焼酎では(程度の差こそあれ)香ばしさを感じることができましたが、この芋焼酎にはそれがありませんでした。

芋焼酎、はじめていただきましたが、なかなかいけるじゃありませんか!
中でも私としては、口当りがまろやかで、かつ香りに華やかさとともに芋っぽさを感じたお湯割りが好みでした。
淡いけれど香り高い、そんな焼酎でしたよ。

こりゃぜひともね、いつか宮崎や鹿児島へ行って地の焼酎を集めてみたくなってきましたよ。



(※1)鮫島吉廣『本格焼酎の世界 その歴史、技術、文化』p.1-2(Foods & Food Ingredients Journal of Japan 214巻1号 p.1-3 2009 FFIジャーナル編集委員会)
(※2)髙峯和則・鮫島吉廣『芋焼酎の風味に寄与する因子について』p.602(日本醸造協会誌 103巻8号 p.601-606 2008.8)
(※3)米元俊一『本格焼酎の香味成分と美味しさ』p.100(日本醸造協会誌 112巻2号 p.96-107 2017.2)
(※4)(※3)p.101
(※5)鹿児島県本格焼酎技術研究会『かごしま文庫(62) 鹿児島の本格焼酎』p.96(2000.6 春苑堂出版)
(※6)髙峯和則『本格焼酎製造技術』p.10(Foods & food ingredients journal of Japan 214巻1号 p.4-13〔『特集:本格焼酎 その歴史、技術、文化』(p.1-27)内〕2009 FFIジャーナル編集委員会)
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【お酒】1275.伊予賀儀屋 無濾過純米吟醸 カップ [38.愛媛県の酒]

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成龍酒造株式会社
愛媛県西条市周布1301-1

アルコール分 十五度~十六度
原材料名 米・米麹
容量 180ml
(以上、ラベルより転記)
(精米歩合および米の産地表示なし)




成龍酒造さんのおさけは、かつて御代栄の上撰カップ(普通酒)と、御代栄の辛口十八番300ml(普通酒)とをいただいております。
今日いただくこのお酒は、無濾過の純米吟醸です。
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純米吟醸ですが、表示すべきものとして定められている精米歩合の表示(※1)がないのみならず、米の産地表示(※2)すらありませんでしたよ。
これはいけませんね。
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なお、濾過についてはかつてこちらで触れております。


純米吟醸ですので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。

無濾過のはずですが、お酒の色はそれほど濃くはありませんでした。
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吟醸香はないですね。

うまみはやや濃いめです。
米のうまみに厚みを感じるとともに、熟成感をわずかに感じます。
苦味や雑味はまったくなく、しかも純米なのにキレがよいですね。

酸味はややはっきりしています。
すっぱさに鋭さを感じますが、弱めです。
刺激やピリピリ感はありません。

甘みはややひかえめです。
ゼロではなく、かなりさらっとした甘味をかすかに感じます。


うまみが厚いがキレのよい、やや濃醇で旨やや辛口のおいしいお酒でした。
やや濃いめでしっかりしているものの、キレがよいので口当りがよく、後味がすっきりしていました。
それに、酸味や甘味が適度で、まるてうまみを引き立てるにちょうどよい程度に調整されているかのようでした。
無濾過のはずですがこれほど飲みやすいのは、造りが丁寧だからでしょうか?

美味しいお酒であればこそ、ルールに定められた最低限の情報公開はなおさら徹底していただきたいものです。

(※1)清酒の製法品質表示基準(平成元年国税庁告示第8号)3(1)
(※2)米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律(平成21年4月24日法律第26号)8条1項
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【お酒】1274.白鹿 カップ [08.茨城県の酒]

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石岡酒造株式会社
茨城県石岡市東大橋2972

アルコール分15度以上16度未満
米(国産)・米こうじ(国産米)・醸造アルコール・糖類・酸味料
180ml詰
(以上、フタより転記)




“白鹿”といっても、灘の辰馬本家酒造さんが造ったお酒ではありません。
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茨城県は石岡市に蔵を置く蔵元さんのお酒でした。
この酒銘について、手元にあった文献では以下のように紹介されておりました。
 江戸時代から続く蔵元4社が1972(昭和47)年に合併、石岡酒造が誕生した。
(中略)
 代表ブランドの「白鹿」は、合併4社のうちの1社が江戸時代から使用している銘柄で、鹿島神宮の白鹿に由来している。」(※1)

鹿島神宮というだけあって、鹿が神様の使いなのでしょうか。


それに、鹿といったらなかんずく奈良の鹿でしょうが、その奈良の鹿は、どうやら元々はこの鹿島神宮に由来するみたいですね。


そんな鹿島神宮に由来するという由緒正しき酒銘をいただくこのお酒ですが、まことに残念ながら糖類酸味料フル添加の三増酒でした。
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普通酒ですので、今日もぬる燗でいただきます。

お酒の色は、少し着いていることがわかる程度でした。
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うまみはやや濃いめです。
最初に渋みがやってきます。
うまみにクドさがありますが、酒臭さ(←ほめ言葉です)もちょっと感じます。
キレはよく、透明感すら感じます。

酸味はひかえめです。
ほとんど感じないくらいです。

甘みはややはっきりしています。
糖添三増酒にありがちなとろみのような舌触りはありますが、甘みにクドさはないですね。


やや濃醇で渋やや甘口のお酒でした。
渋みが鋭くて気になります。
甘味にも、とろみのような舌触りがありますね。
でもキレがよいせいか、それらが緩和されている感じがいたしました。
これはきっとアル添の効果でしょう。

(※1)『茨城の酒と蔵』p.119(2002.10 茨城新聞社)
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